昔の話7

仕事を辞めてから精神状態は特に回復があった訳でもなくて、しばらくの間は辞める前と何ら変わりのない毎日を送っていました。

朝起きて、ボーッとして、無音のTVをつけて、外からの光に消えてしまいたくなる気持ちが溢れて、決められた薬を飲んで、家には一人、部屋の中で体育座り。常に希死念慮が頭にあって、考えが変な方向に行きそうな時には動画サイトでヒーリングや脳波を整えるような音楽を聞いて気を紛らわせたり、何度も読んだ本を読み返したりしていました。動かないからお腹は減らないし体力は無くなっていく一方、ご飯は食べられないから工夫して、流し込めるスープやお粥ばかり。家族と会話もないまま、夜になったら睡眠薬で眠っていました。一人でいるとどうも思考の海に流されて、塞ぎ込みすぎた反動かふとした事で涙腺が崩壊するんです。こんな事で?って自分でも引くほど驚くような些細な事で涙が勝手に溢れてしまうんです。それが一番強くなるのが夜なので、刺激を受ける前に無理矢理薬に逃げるしかありませんでした。そんな毎日でした。死にたくてたまらなかったし、寧ろ殺してほしいくらいでした。夜眠ってる間に誰かに殺されていたらなぁとほぼ毎日のように思いながら床で眠りました。

 

 

私は中学生くらいの頃からNONSTYLEが好きで、よく漫才を見ていました。でも公私のゴタゴタをきっかけにTVでも何を見ても聞いても笑えない。何も面白くない。何も楽しくない。誰と居ても、何をしてても。好きだった事への興味は薄まり、趣味も無くなり、何も手につかない。端的に言うとこの世に対する執着や未練になるような、もう少しだけ生きたいと感じられるような、例えば好きな漫画の続きが来週も読みたいだとか、そんな引き止めるものが何も無くなった状態で。喜怒哀楽の何も感じませんでした。その頃の私は大袈裟ではなく、表情筋と感情が死んでいたと言ってもいいと思います。

 

また頭の中がぐるぐるし始めてヒーリングの音楽を聞いていたある日、なんとなしに(もしかしたらNONSTYLEなら見れるのかな)と思い至り、少しだけ検索してみたらライセンスというコンビとNONSTYLEのコラボトークが引っかかりました。その時の私は(ライセンス?あぁ…お姉ちゃんが昔好きだった芸人か)くらいにしか思っていませんでした。その程度の気持ちだった私を変えてくれたきっかけはそこからだったのかもしれません。BGM代わりといってはなんですが、そのくらいの気持ちでその動画を開きました。

 

NONSTYLEと、見た事あるような無いような、二人。藤原…あぁ、この人がお姉ちゃんがファンだった人か。ふーん…。

 

その動画を見ていても結局笑う事は出来なくて、でも確かにトークのテンポはきっと元気な状態で聞いてたら凄く好きだったろうなぁ、という感じでした。私はその後も関連動画にあった動画をまたBGMとして流していました。

 

音にしんどくなったり無理になったら切ればいいし。

時間は馬鹿みたいにあるし。

別に、もうなんでもいいや。

 

膝を抱えて顔を伏せながらほぼラジオ状態。

どのくらいそうしていたか分かりませんが、割と早めに「その人達」を知りました。どうやら凄い人がいる。その人はとてつもなくアホだと。ライセンス井本さんの口から語られるエピソードの数々に内心「へぇ…凄いな…そんな人いるんだ」と思いました。エピソードは共通して、全てが真っ直ぐ。ピュアというか、馬鹿正直というか、色んな人から好かれて、ちょっとズレてるけど、我が道を行っているというか、自分に対して誠実というか、本当に…思い込んだらまっしぐら、みたいな。昔のギャグ漫画にありそうな、主人公みたいな人だと思いました。正直とても羨ましくなりました。そんな風に生きれたらなと。顔は知らない「森木」さん。他の動画でも度々「森木」さんのおバカエピソードは語られて、時折聞こえる「重岡」さんはどうやら「森木」さんの相方らしいとか、面倒見の良い方だとか、お酒を飲むと大変な事になるとか、真面目だけど口が悪いだとか、他にも色々。

 

…どんなコンビなんだろうか、この人達は。

とても久しぶりに、人への関心と興味がわきました。